MarmotマーモットのAsylumアサイラムというシングルウォールのテント。現在の日本では単に販売していないだけなのか、それともマーモット社で生産を打ち切ってしまったのか、不明です。
ただ言えることは現在の日本では入手できない“幻”で“お宝”のテントだということです。
このアサイラムはとてもユニークなテントですから、特徴はたくさんあります。
アメリカで90年代中盤から2000年にかけて市場にでまわっていた同社の代表的なテントでした。
インナーフレーム方式
アメリカのシングルドームテントはインナーフレーム方式が多いことが特色なのですが、アサイラムもインナーフレーム方式が採用されています。
またフレームスリーブにかかる風圧がないこともメリットとして挙げられます。
しかし設営はやたらと面倒です。
- 設営にはまず、ドアパネルを開けて、フレームを持ちながら、上半身をテントの中に潜り込ませる。
【頭隠して尻隠さず】のポーズでフレームをセットするので、かっこ悪いスタイルで設営します。エクスペディションのような状況下では、そんなことも気にしていられないのでしょうけれど、通常のキャンプなどのシーンにおいては女性にとっては周囲の目がどうしても気になってしまいます
- フレーム2本をテントの四隅にセットします。コレがなかなかシンドいんです。
四隅の補強された部分に正確にセットしないと、フレームの先端がテント地を突き破ってしまうからです。けれど、女の子の腕力ではコレがけっこうキツいのです。温暖な気温の場合は布もある程度伸縮性があるのですが、寒冷(地)時期では布も強張りフレームセットだけでも歯を食いしばるくらいの力が必要となります。スタンドアップした状態が冒頭の写真となります。 - 実はこれで完成というワケではありません。
もちろん、この段階でも十分使用可能なのですが、雨天や雪などでは全室をセットできるんです。
それに、入り口の上に潰れた庇がありますが、この庇に湾曲加工されてるフレームをセットするんです。
コレがまた女性の腕力ではなかなかハマッてくれません。アメリカのテントの多くはCADで設計おりますから、縫製段階でロスしてしまうずかな寸法の歪が考慮されていません。ですから、パツンパツンに張ってしまうのです。
出入り口の上の庇に湾曲フレームをセットすると(上)写真のようになります。
ここまでセッティングして初めてこのテントに機能性が出てくるのです。
(左)写真の半円形の窓が、このテントで言うベンチレータです。このベンチ、開放すると寒い時は換気効果が絶大です。
冷気がテント内に流入してくる勢いは強烈です。テント内部からだと(右)写真のように見えます。
テント内部の後方にも巨大な半円形のベンチレーションがあります。冬場はこのベンチレーションのおかげで換気は十分に確保されます。
バックルで接続するのですが、これが吊り下げ式のラックにるワケです。
ちょっとすごいアイデアですよネ!
2人でテントを使う時なんかはこの2ヶ所のラックのおかげで収納や整理整頓は効果的になります。
テントの設営。内部の部品のセット。これだけでも山岳用テントとしては致命的なくらい時間がかかるテントなのです。できあがってしまったらとても快適なんだけれど。。。
さらに、さらに前室をセッティングするとなると、設営時間は10分以上はかかってしまいます。
山岳用テントじゃ致命的な問題だよネ。。。前室をセットすると下の写真のようになります。
なお、このテントは日没後の設営はほぼ絶望的と言えると思います。もちろんトライしてできないワケではないですが。。。
いったん設営してしまえば、室内空間は広々としていて快適快適。
本体と前室は接続式ですが、瓦のように段差になっているので雨は侵入してきません。
またドアパネルは(右上)写真のよーに、D字ドアオープン方式を採用してるので、ドアパネルがダラ〜ンと地面に垂れ落ちることがありません。
このアサイラムは写真を見てもおわかりのように、収納サイズは超〜巨大デス。
左はメスナーテント、真ん中はシェラデザインズの【サミット】、右がマーモットアサイラムです。どれも2〜3人用で同じサイズなんです。
どれだけ日本のシングルドームがコンパクトだか実感。てか感謝に近いです、この収納サイズ。
【重い】【嵩張る】【設営(撤収)が面倒】(あと、とんでもねーくらい高額!!)コンパクトテントの三重苦なヤツなんですけど、設営完了してしまうと、このテントほど快適なもんはないです。
・フレームスリーブ分、室内空間が広い
・収納スペースが充実してっから、フロアを有効に使える
・換気能力が優れてる
・インナーガイラインシステムを使うと耐風性がアップする
などの利点があります。
またまた使用されてる素材はマーモットメンブレンは無孔質防水透湿素材でゴアテックスよりは劣るものの湿気をしっかり排出してくれています。
通常、防水透湿素材(3レイヤードの場合)は
表面→ナイロン、ポリエステル
ミッド→防水透湿素材
内面→トリコット不織布 というパターンが多いのですが、
このマーモットメンブレンは内面にデュポン社の【ソンターラ】という不織布が使用されています。
ソンターラの触感は厚い和紙のような感じで、トリコット不織布よりもアクティブに湿気を吸収してくれています。ですから結露の不快感もちょっとだけ軽減されてるような錯覚に陥ります。
またボトム素材も地面スレスレまで低く設計して防水透湿素材を最大限に使用してるので、結露の軽減には有効なつくりです。
縫製箇所について
写真だと解りにくいんですけど。。。縫しろの上からテープで袋とじ縫製を施してます。
コレ、けっこう重要なポイントなんです。
万一縫い目から浸水があっても、この袋とじ縫製だと水はポタポタ垂れてこないで、テープ内部に水は進んでいきます。一種の雨樋の役目を果たしています。テープの素材も防水加工してあるのが、その証拠といえるでしょう。
あと、バッグなんかを作る時も同じですが、テンションや重さがかかる縫製部分はこうした補強は非常に大切な役割を果たしています。サイト『ウェブDEきゃんぷ』の中で「縫いしろ」の重要性を書いてますが、縫いしろを十分とって縫製するだけじゃなく補強用のテープを被せて縫製すると縫製部分はさらに強くなるんです。
ワケは「布1枚分の強度がアップする」ことと「テープが相反するテンションを緩衝してくれる」からです。
ライペンのエアライズが補強テープで縫製しているのも、30dnってゴク薄の素材をテープの緩衝によってテンションの緩和を図ってるからなのでしょう。
こうした細かいトコまで配慮してるマーモットってホントすごいと感動してしまいます。
ラテラテントと比較します。ラテラの張り綱の支点はキャノピー部とボトム部の縫合部分から出てますが、それだとテンションがかかった場合、ボトムが引き上げられてしまう!という問題が発生してしまいます。
マーモット・アサイラムは思い切って張り綱の支点をテント中央にもってきています。コレも思い切ったアイデアなんですヨ
この辺りならばテンションによってボトムが引き上げられることはないですし、テントの内部空間も少し広くなります。また支点が高い分だけ耐風性がアップしているはずです。
ホントに研究され尽くしたテントって言えるでしょう。
重い・嵩張る・・・みたいなデメリットも欧米人の体格・体力を考えると、もしかしたらそれほどデメリットになっていないのかも知れませんし。。。
一説によると、このアサイラムが開発された当時、マーモット社には有名な2人のデザイナーがシェラデザインズから移籍したってコトも聞いたことがあります(証拠となる資料はみつかりませんので、単なる噂を書いてますから鵜呑みにしないでネ。ホントかも知れないしウソかも知れないから。。。)
しかし・・・アメリカ人がつくるシングルドームって、頑固です。。。
インナーフレームだから、サブ的にフライシートや外張りなんてセットできないですし・・・。
「シングルドームはシングルドームなんだから、フライシートや外張りなんて必要としたらウソじゃん!」みたいな主張がこのテントからは聞こえてきそうな気がします。「フライシートなんか使わなくて布1枚で水をシャットアウトするぜ」って言いたげなまでの防水処理。
じっくり観察してるだけで感動してしまうテントでした。
![]()



